格差と民主主義 ロバート・B・ライシュ
格差と民主主義 ロバート・B・ライシュ
ロバート・B・ライシュ
ロバート・B・ライシュ氏は民主党政権のオバマ大統領のアドバイザーであり、クリントン政権時にも労働長官などを歴任している大学教授です。
格差と民主主義
「格差と民主主義」では兼ねてからいわれているアメリカの格差社会の現状を冷静に分析しており、どうすれば格差を是正できるか、また、実際にどう格差を是正していくか、という提言を行っている。
超富裕層が政治献金で政治をゆがめる
アメリカでは人口の0.01%という、ごく一部の超富裕層が米国の富の90%以上を所有しているという超格差社会が出来上がっている。アメリカンドリームといえば聞こえはいいが、この超富裕層・大企業経営者が有力な政治家や団体に多額の政治献金を行い、ロビイストを雇って、富裕層の減税を要求。
その結果、所得税の最高税率は過去最低水準となり、税収が減ったために子供の教育や女性・低所得者などの社会保障カットに影響を与えている。
民主主義や経世済民の理想からは程遠いアメリカ政治
民主主義が単純に1人1票であれば、大多数を占める中低所得者層の生活向上を訴える政治家が選ばれるはずだが、党内の大統領選挙キャンペーンでも多額の政治資金が必要で、結局のところ集金力のある政治家が党内でも力を持ち、政策をリードする、というのがアメリカの現代政治の実情である。
2008年のリーマンショックでも多額の援助が金融機関や保険会社、大手自動車メーカーなどに振舞われ、多くの労働者がクビを切られたが、経営者や取締役たちは、赤字になっても数億円のボーナスや自家用ジェットを手にしている。
一方、貧しい地域や黒人・ヒスパニックでは日常的に差別を受けているだけでなく、教育環境も十分ではない。アメリカでも就職に重要視されるようになってきた学歴を得るためには、生まれながらにして格差が大きなハンディキャップになっており、貧困の連鎖が続く。
ゲームのモノポリーは最初は同じ資金を持って始めるルールだが、現実社会では資金も駒を進めるさいころの数も最初から開きがある「不公正なゲーム」なのだ。
不公正なゲームを止めるには
ロバート・B・ライシュ氏はこのような不公正なゲームを止めるには、一人ひとりの有権者が政治を監視し、ものを言う有権者になるしかないと言う。
市民一人ひとりの政治活動は、選挙の投票日に終わるのではなく、投票日の翌日、政治家が仕事を始めた日が本当の始まりである。
選ばれた政治家がどのように発言し、公約どうり政策を進めているか、監視し続け、おかしければ声を上げ、最終的には次の選挙で判断する。
日本でも所得税の最高税率は下がっており、法人税減税も進められる一方、消費税は引き上げ予定。もちろん国外との競争や財政再建もあり、理想だけでは実現できないのが政治だが、現実を整理し、分かりやすく説明し、しっかり課題解決をしてくれる政治家を、市民一人ひとりが選ぶ。
そんな「民主主義の基本」が今まさに問われている。