2025年2月5日放送のNHKの「あさイチ「大人の絵本特集」が良かったので紹介された絵本などをすべてまとめました。ヨシタケシンスケさんインタビューも素敵だったので文字に起こしてまとめました。
大人が感動する絵本が人気
東京丸の内の ehons 絵本と雑貨のお店
2025年2月5日のあさイチです。大人の絵本特集です。東京丸の内の ehons という絵本と雑貨のお店です。「寝ない子誰だ」「あ〜んあん」「るるちゃんの靴下」などの絵本が並んでいます。累計500万部を突破した「ねずみ君のチョッキ」シリーズや「金魚が逃げた」グッズも多数販売されています。
本の懐かしいキャラクターを懐かしむ方が多く、大人の女性が多いようです。30代の女性は、子供の時に見ていたのとまた違った目線で今面白いと感じています。50代の方は絵が可愛いと感じています。地元の図書館で借りようとしたら30人以上順番待ちになっていたとのことです。諦めて本屋さんで買うことにしました。書店の担当者は、「大人の方が絵本と向き合って、ひとつの物語を持ち帰ってほしい」と話しています。
分かったさんシリーズの「アイスクリーム」「ひんやりスイーツ」「スイーツポテト」などが人気です。ロングセラーになっています。不思議な世界に迷い込んだ女の子がお菓子を作る物語で、お菓子作りが楽しくなります。33年ぶりの新刊も発売されました。シリーズを全部大人買いしていくという人もいます。
EHONS TOKYO.
東京都千代田区丸の内1-6-4 丸善丸の内本店2F
https://ehons.jp/
パンどろぼうシリーズも人気
もう一つ人気なのがパンどろぼうシリーズです。世界一の美味しいパンを求めて盗みを働く大泥棒です。キャラクターが可愛く、意外な結末「まずい」と言って苦労して盗んだパンがおいしくなかったというストーリーです。
大人向け絵本が売れている
絵本全体の推定売上金額はぐっと上がっています。2014年には290億円でした。2016年には310億円を超え、2020年以降さらに上がりました。2022年には過去最高の3501億円に達しています。こちらは2024年版の出版指標年報です。10年で1.2倍になっています。
大人がはまる絵本の魅力
懐かしくて癒されています。「猫は留守番」「どすこい兄ちゃん」「パン屋さん」など、大人がはまっている絵本の魅力を特集します。ある女性がはまったのは、失敗ばかりするカバの絵本です。消防士になれるかなと思っています。この本のおかげで子育てのプレッシャーから救われたそうです。「自分が頑張らないといけない」と思いすぎていました。絵本が心を軽くしてくれて生き方も変えてくれました。
人気の絵本作家・ヨシタケシンスケさん
大人たちに大人気の絵本作家は、つまんないつまんないという本などを書いているヨシタケシンスケさんです。サイン会などは大盛況です。創作への原動力は不満です。満たされている時は1枚も書きません。気持ちが落ち込んだり、不安になった時に自分を元気づけるために書いているということです。
心が楽になる大人に人気の絵本 大人向け絵本を多数紹介
最近人気の「大ピンチ」時間など疲れたあなたに読んでほしい、心が楽になる大人に人気の絵本を紹介します。名作の絵本が並んでいます。「猫と猫」「いないいないばぁ」「怪獣たちのいるところ」「どうぞの椅子」「鼻の好きな牛」「3匹のヤギ」「初めてのおつかい」「大丈夫大丈夫」「あいうえお弁当」「お月様こんばんは」「忘れられない贈り物」。何年ものロングセラーになっているものから最新の絵本まで紹介しています。「こんとあき」「もちもちの木」「だるまちゃんとテングちゃん」。
出演者のおすすめ絵本
浜島直子さんがおすすめしていたのが「100万回生きた猫」です。中越典子さんがおすすめしていたのは「1話だけ 反対に歩いたら 歩いたら」という不思議なタイトルの絵本です。子供の時から読んでいたものも大人になるとぐっときます。大人になってからプレゼントでもらって、それが何かとハマりました。
大吉さんは「ウォーリーを探せ」。スマホで写真撮影して拡大すると結構見つけられます。花丸さんがおすすめするのは「スイミー」です。50代の方にはすごく印象的です。また、絵も今見直してもとても美しいですよね。
困ったさんシリーズも今人気です。歌詞が入っていますが、もちろんメロディーはないので自分で適当に節をつけて歌ってみたり、レシピが載っているのでそれを実際に作ってみるといった楽しみ方もできます。
「14匹の朝ごはん」「はらぺこあおむし」などの絵本も飾られています。鈴木アナがおすすめしているのは「グルンパの幼稚園」。浅井アナウンサーがおすすめしているのは「グリとグラ」です。長年のマスターピースが改めて読めば無邪気さに心が洗われます。大人になってから読むとまた違った見え方、感動の仕方がありますね。
ヨシタケシンスケさんの絵本の魅力
多くの方が名前を挙げたのがヨシタケシンスケさんです。大人にも刺さる絵本が多いです。「見えるとか見えないとか」「暑かったら脱げばいい」「寝癖の仕組み」「それしかないわけないでしょう」「私の輪ゴムは渡さない」「あんなにあんなに」「リンゴかもしれない」「僕の偽物を作るには」「もう脱げない」「理由があります」「なつみは何にでもなれる」など、大人にも刺さる絵本です。サイン会でも行列になります。
大人が忘れた何かを感じられる
絵本作家のヨシタケシンスケさんは累計600万部も売れています。人気の理由は可愛い絵柄だけでなく、大人が忘れた何かを感じられるということです。大人になって決めつけたり諦めたりしていることが多くてハッとさせられるということです。「それしかないわけないでしょう」では、「これとこれどっちにする」と言われたら、
「新しいものを自分で見つけちゃえばいいのよ」と励ましてくれます。このような味わいが、大人に大人気で世界17カ国以上で出版されています。それぞれの国の言葉に翻訳されています。
ヨシタケシンスケの絵本に救われた人々
そんなヨシタケさんの絵本に救われたというのが「逃げて探して」という本を読んだ方です。
「自分を守るためには逃げていいんだよ」というところが良かったということです。4年前に出版されました。自分が辛くなった時にはどうすればいいのか、そんな日常が描かれています。
「逃げることは恥ずかしいことでも悪いことでもない。君の足はやばいものから逃げるためについているんだ」という言葉があります。
「そう、人は動くことができる。動くかどうかを自分で決めることができる」という言葉です。木は動けませんからね、それとは違います。
自分を守るための選択肢
この方は、自分を守るため、自分の幸せを守るために、今いるところから動くという選択肢もあるのではないか、良い方向を探すのも良いのではないかと思いました。この方は20代後半から子育て、育児をしましたが、その後両親が認知症になり、10年間も介護をしました。その後はお姉さんに知的障害があり、高齢になってきたので解除が必要になりました。今でも毎週末グループホームを訪れて差し入れの料理を作っています。なるべく好きなものが入っているものを作っています。
家族の支え
両親の介護が終わったと思ったら、次はお姉さんの解除です。そんなことをしているうちに自分ももうすぐ60歳になります。将来に不安を感じました。全部置いて逃げたいと思うこともありましたが、でも自分がいなければ他の人は困ってしまいます。どうすればいいのか、しんどくなってしまいました。そんな時にこのヨシタケさんの絵本に出会いました。
前向きな言葉に励まされて
そこで先ほどの言葉、
「人は動くことができる。動くかどうかを自分で決めることができる。大事な人や大事な何かを探しに行こう」という前向きな言葉に励まされました。自分にとっては大事な時間を取り戻すということ、家族との時間をもっと大事にするという風に思いました。もちろんお姉さんを見ることも大切ですが、自分の人生も楽しく過ごしたいと思いました。お姉さんから離れられる選択も必要かもしれないとやっと思えるようになってきました。
新たな選択肢を考える
そして家族に相談して、お姉さんの解除を手伝ってもらい、これまで行けなかった30年以上ぶりの海外旅行に行くこともできました。「これしかない」と思っていましたが、絵本との出会いによって、お姉さんも自分も家族も幸せな方法を探すことを考えました。
絵本の力
今の心境にぴったりな言葉がありました。「すぐには見つからないかもしれないけれど、探すのをやめてしまうと二度と出会えなくなってしまう。だから探し続けよう。だから動き続けよう」という言葉でした。何か動き始めないといけない。家族との時間をもっと大事にしたいし、お姉さんのためにも、自分のためにも、進んでいきたいと思うようになりました。物理的にお姉さんと離れることを勧めているというよりは、自分の心を客観的に見返すきっかけになったのではないかということです。
それによって、お姉さんのことも子供たちのことも大事にしていきたいということを感じました。やはり絵本には、いろんな人がいろんな環境にいますが、その中に深くてシンプルな言葉がぐさっと刺さって、自分が変わるきっかけだったり、励ましてくれたりするというのが絵本の魅力ではないかと思います。
「このあと どうしちゃおう」の魅力
「このあと どうしちゃおう」という本もおすすめする人がいます。最近、おじいちゃんが死んでしまったという男の子です。おじいちゃんが書いていたノートを発見してノートを開くと、おじいちゃんは天国に行く時の格好や天国に持っていくものを考えていました。そして天国はそんな場所かと想像していました。それは実はとっても幸せな場所でした。おばあちゃんがいて、また会えるとか、食べ終わったお皿を持っていくだけで大金がもらえるとか、みんながどこかを褒めてくれるとか色々想像して楽しんでいたそうです。しかし、この男の子は思いました。「でもおじいちゃんは本当は死ぬことがすごく寂しくて怖かったのかもしれない」と思いました。だからこのような楽しい世界を想像していたのかもしれません。面白い視点ですね。楽しいだけのお話ではありません。また、絵のタッチもヨシタケシンスケさんの表情や描き方も素敵ですね。自分も限られた時間を楽しく過ごすためにやりたいことをリストアップし始めたということです。
ヨシタケシンスケさんに独占インタビュー
このような大人に響く言葉や独創的な発想はどうやって生まれるのかを、ヨシタケシンスケさんに独占インタビューをしました。
発想の源泉
発想の源泉は小さなメモ帳です。しかし、これがなんと90冊くらいあります。買い物メモと目にした光景、思いついたものなどを書き留めています。オムツの中にフライパンや鍋つかみをいっぱい突っ込んでいる赤ちゃんや、適宜取り出して襲いかかるという赤ちゃんです。初めて海を見た子が「海は誰のものなのか?」と聞いているお子さんがいて、それが素敵だなと思って思わずメモを取りました。遊んだ気持ちはすっかり忘れていたということです。このような日常で起きたことを忘れないようにメモをしていきます。
しかし、アイデアが浮かんでくるのは満ち足りている時ではありません。そういう時には1枚も書きません。気持ちが落ち込んだり、言いようもなく不安になった時に自分を元気づけるために書いているそうです。リハビリのような感覚で書いています。メモが増えることが必ずしもいいとは言い切れないそうです。このようにイラストにすることで、自分のネガティブな気持ちがごまかせるということです。
絵本作りの原点
絵本作りの原点は、幼少期から変わらない心配性の性格だと言います。すごく甘えん坊で怖がりで、不安が強くて心配ばかりしていました。だからこそ当時の自分に、「こう考えたら怖さが減るんじゃない?」と思ったり、「そんなに怖がらなくても大丈夫だったよ」と大人になって分かったことを子供の頃の自分に向けて描いているそうです。それが一番の原動力だということです。
現在の不安と更年期
吉武さんが今感じているのは、自分自身の老いの不安です。頭を抱えるおじさんの姿、寝たはずなのに朝から疲れているという自分の姿が描かれています。50歳を過ぎて更年期を感じています。「ただいま飛行機は更年期の中を飛行中ですので、しばらく揺れが続きます。シートベルトをしっかりとお締めください」と書いてあります。飛行機を降りるわけにはいかないので、乗ってじっとしているしかありません。そういうものだと思って耐え忍ぶしかないと感じています。
絵本屋さん大賞象で入賞
全国の書店員が選ぶ絵本屋さん大賞で入賞しました。「ちょっぴり長生きするそうです」という絵本です。ネガティブな自分の気持ちがちょっぴり楽になるかもしれないということが書いてあります。
「あなたの小さな神様が許してくれるそうです。あなたをその気にさせるスイッチは自分では触れない場所についているそうです。背中ですね。ちょっといい嘘です。こんないい嘘をお互いに交換したりシェアすることで、いい社会に繋がるのではないかと考えています。適当だからこそいいことってありますよね。自分を元気づける行動は何でもいいですが、そんなおかしな理由がもっとあってもいいのではないかと考えています。
おまじないジェネレーター
最後に、3月に行われる展覧会の企画を伺いました。「おまじないジェネレーター」です。3つのサイコロの言葉を組み合わせると想像もつかない面白いおまじないができます。好きな人を書いて手に持って一緒に鏡に映ると願い事が叶うそうです、という風に3つのサイコロそれぞれの文章を組み合わせるとそうなります。しかし、ちょっと変わると「靴下を手に持って一緒に鏡に映ると願いが叶うそうです」になってしまいます。これもちょっとクスッと笑ってしまいますが、楽しいですよね。意外とSNSでバズるかもしれません。うちのサイコロを振ると「輪ゴムを」と出てきました。「2は可愛い名前にすると」と出てきました。「3のサイコロでは願い事が叶うそうです」と出てきました。これも面白いですね。輪ゴムにどんな名前をつけたらいいんでしょうね。
ネガティブな気持ちを書いて現実逃避
ヨシタケさんのようにあえてネガティブな気持ちを書いて現実逃避するのも悪くないんです。だからこそまさに大人に刺さるのかもしれません。「この飛行機、一人乗り」というのがやはり刺さりますよね。
「ぼちぼち行こか」に励まされた人々
また、カバが主人公の絵本に励まされたという人が多いです。「ぼちぼち行こうか」というタイトルの本です。「僕、消防士になれるやろか?」「なれへんかったわ」と様々な職業に挑戦して失敗するという物語です。この本に救われたという60代の女性は、30年前に絵本に出会いました。ちょうど子育て中でした。子供に読み聞かせるよりも自分に言われているように思いました。子供はそれなりに育つではないかと気づかせてくれました。
子育て中の気づき
不妊治療を経て子供を授かりましたが、初めての子育ては大変でした。お子さんに様々な習い事をさせました。親として子育てを失敗したくないと思っていましたが、その一方でほんわかした喧嘩のない家族を作りたかったです。そのためには子供をまっすぐ育てないといけないと思って視野が狭くなってしまいました。しかし、お子さんが学習塾に行きたくないと言い出し、思い通りにいかない子育てに悩みました。
ここらでちょっと一休み
その時に「ぼちぼち行こか」の絵本に出会って、失敗してもくじけないカバの姿に「そんなに気張らなくてもいいよ」と思い変えさせてくれました。初めからこう思っていれば、子供たちには無理させずに済んだのではないかと思いました。その後は子供の意思を大事にすることにしました。ずっと胸にあったのは、
「ここらでちょっと一休み。まあぼちぼち行こうか」という言葉です。今でも自分の部屋の一番目立つ場所に飾っています。年を取ってまた別の問題も出てきていますが、ぼちぼち行こうかと思っています。改めて別の意味で心にしみてきます。
関西弁への翻訳で柔らかい印象に変化した
もともとはアメリカの絵本で「カバは何になれるのか?」というタイトルですが、なぜか関西弁にしてしまいました。これを企画したのは当時の編集担当者、西野屋敏子さんです。原作では失敗するたびに「ノー」という言葉が繰り返し使われていますので、そのまま訳すとネガティブなイメージを子供が持ってしまうと心配しました。関西弁にすることで柔らかい印象にできました。上層部の人たちからは大反対されましたが、関西支部の方から熱烈な支援を受けて、1980年に出版して大ヒットし、今でもロングセラーの作品となっています。
動物が主人公の絵本の人気
今よく売れている本にはたくさんありますが、動物が主人公になっているものが多いですよね。大きな書店の絵本コーナーには、猫や子猫が主人公の本が多いです。「11匹の猫」など、猫が題材の本が多いです。
猫の町、谷中の猫の絵本や雑貨が多い古本屋「ひるねこBOOKS」
その理由を調べに東京の谷中にやってきました。猫の町、猫の商店街として有名です。そこでちょっと可愛らしい古本屋さんにやってきました。絵本がたくさんあります。猫の絵本や雑貨が非常に多いです。店主の小張たかしさんさんは、猫が好きで子供の頃から猫を飼っていました。出版社勤務の後、9年前にこの店をオープンさせました。「昼猫ブックス」など、猫の絵本もプロデュースしてきたそうです。
ひるねこBOOKS
東京都台東区谷中2-5-22 101
https://www.hirunekobooks.com/
猫の絵本が多い理由
なぜ猫の絵本が多いのかを教えてもらいました。犬はいろんな種類がいて、大型から小型まで多種多様ですが、猫は模様は違いますが基本的には同じような大きさや形をしています。猫好きな人は割とどんな猫も好きだったりします。自宅で黒猫を飼っても三毛猫も白猫も好きです。野良猫も好きですという風に感じています。
絵本の出版社 白泉社での調査
今度は東京淡路町の、猫の絵が印象的な出版社、白泉社に行きました。編集担当者の森あやこさんの名刺には「猫に食べさせてもらっている出版社」と書いてあります。ノラネコぐんだんに食べさせてもらっているそうです。
人気の絵本シリーズ「ノラネコぐんだん」
ちょっと反省してるポーズですが、シリーズ累計500万部発行されている大人気絵本シリーズです。工藤ノリコさんが描く主人公の8匹の野良猫が人気です。様々な場所に忍び込んで好き放題やっています。最後にはドッカンと爆発して最後に反省するというパターンになっています。この野良猫軍団が人気で、グッズも1000以上も作っているということです。
猫の自由な生き方憧れているから
さて、猫の絵本が多い理由は、猫に憧れているからではないかということです。自由に生きていて好奇心が旺盛です。素直な要求で行動していて見ていて気持ちが良いです。ぶれない自分軸で生きているのが人気なのではないかと感じています。見た目がだんだん似てきていると言われますが、中身はちゃんと上司に言われた通りにサラリーマンとして従っているそうです。
絵本作家・町田尚子さんへのインタビュー
絵本作家の町田尚子さんにも聞いてみました。「猫と猫は留守番」「名前のない猫」などの絵本を書かれています。これまでに警察以上の猫の絵本を出版しています。自分でも猫を飼っています。細かく、この毛の一本一本まで描写されています。
猫の無表情の魅力
特にこだわっているのは無表情で書くことだそうです。どんな感情か分かりにくいようにしています。猫も表情があるよという人はいっぱいいますが、自分からすると家の猫は常に無表情ということです。ゴロゴロ言って甘えん坊モードでも表情は無表情ということです。怒っているようにも笑っているようにも、やる気があるようにもどっちにでも取れるというのはちょうどいい存在だということです。
無表情の猫の魅力
無表情の猫の方が読者に感情を委ねられるので、猫の絵本が多いのではないかということです。感情次第ですよね。答えがない分解釈が広がるというのが無表情のいいところです。それが猫にはまる理由です。
博多華丸さんの絵本
そして、博多華丸さんも「バイバイ ネコバイ」という本を出版しています。お父さん芸人を集めて事務所の企画でやったそうです。十二支の始まりでもネズミから始まりますが、あれも猫はかわいそうですよねといったところから始まったそうです。
大人の絵本ブームの変遷
絵本大国・日本
絵本は今も新刊が年間2000冊も出ているそうです。日本は絵本大国だということです。年間2000万人が利用している絵本情報サイトの編集長の磯崎園子さんに教えてもらいます。
大人向け絵本ブームも時代とともに変わってきた
大人の絵本ブームは時代とともに変わってきました。2000年代は泣ける絵本が大ヒットしました。「葉っぱのフレディ」「いつでも会える」「大丈夫大丈夫」などです。2010年代は日常を見つめる絵本、「朝になったので窓を開けますよ」「瞬き」「大切なこと」などです。2020年代は笑いや実用性のある絵本がブームになっています。鈴木憲武さんの「大ピンチ」「図鑑 卵の話」「魔法のわくわくおにぎり」などです。
2000年代の泣ける絵本が大ブームになった
2000年代は泣ける絵本が大ブームになりました。「いつでも会える」や「飼い主をなくした犬」のワンちゃんの視点から書かれた絵本です。「葉っぱのフレディ」も命や人生というテーマを絵本にできるということで驚いた大人が多く、ブームに繋がっていきました。この当時、磯崎さんも書店員をされていました。この「いつでも会える」という本はホワイトデーの贈り物として10代20代の男性が当てに持ってレジにずらっと並んでいたというのは印象的だったそうです。そんなことがあったんですね。女性だけでなく男性も絵本売り場に来ていたというのが印象的でした。
2010年代の日常を見つめる絵本が増えた
そして2010年代には日常の大切さに気づかせてくれる絵本がたくさん出てきました。代表的なのは「朝になったので窓を開けますよ」という作品です。本当に絵画のような絵の絵本です。いろんな世界や街の朝の風景が描かれています。文章は何と「朝になったので窓を開けますよ」と言うだけなんです。それだけなんですが、田舎の風景や海の風景などがどんどん出てきて心に染みますね。この当時は東日本大震災のあった年です。絵本作家さんにもその影響がありました。当たり前だと思っていた日常がどれくらい尊いものかということを全ての人が思い出しました。そして、そんな状況でも朝になったら必ず日が差して明るくなってくるんだということをまた改めて気づきました。
2020年代の笑いや実用性のある絵本が増えている
大ピンチずかん
2020年代には笑いや実用的な要素のある本が多くなりました。子供の日常の笑える瞬間を描いています。大ピンチずかんは「日常の大ピンチは切実ですが、客観的に見ると笑っちゃうというところもあります。ピンチを笑いに変えていくのも人生を力強く乗り越えていく一つの方法ではないかということです。先行きが不透明な時代だからこそ笑い飛ばそうというのも今のニーズになっているのではないかということです。
魔法のわくわくおにぎり
そして実用的な「魔法のわくわくおにぎり」です。いろんなおにぎりが登場します。桜えびとしらすのザクザクおにぎり、絵も可愛いですが本当に作ったら美味しそうですね。子供たちが苦手なピーマンも可愛く描かれていて、ツナと合わせてピーマンを使った美味しそうなおにぎりが出来上がりました。最後にちゃんと詳しくレシピも書いてありますからね。絵本のようで料理本です。絵本を楽しむだけでなく家事や育児にも役立つ。子供とのやり取りも役立つ一冊で三度美味しい絵本。コスパやタイパのいい絵本ということでしょうか。
「大切なこと」の絵本の魅力
内田也哉子さんが翻訳
次はアメリカで60年以上前に発売された「大切なこと」という絵本です。内田也哉子さんが翻訳しました。この本を読んで大切な決断ができたと語る女性がいます。40代の方です。自分は答えを誰かに求めていたり探していましたが、答えはなくてもいいという新しい考えをくれたという絵本です。
私たちの身近にもある大切なことが描かれていました。
雛菊は白い。真ん中は黄色く、長くて白い花びらには蜂がちょこんと座っています。でも雛菊にとって大切なのは白くあること。りんごのページは、
りんごは丸い。でもりんごにとって大切なのはたっぷり丸いということ。
空はいつもそこにある。でも空にとって大切なのはいつもそこにあるということ。
「たいせつなこと」の絵本との出会い
ぱっと読んだら意味が分かりませんよね。当たり前のことを書いているようですが、でもそれだけではありません。10年前に出会った時は専門学校で講師をしていました。生徒と指導して向き合っていましたが、主任になって生徒と触れ合えず、物足りない日々を過ごしていました。自分のいる場所はここなんだろうかと悩んでしまいました。ビジネス書を読み漁りましたが満たされませんでした。そんな時にこの絵本に出会いました。
あなたがあなたであること
最初は意味が分かりませんでしたが、繰り返し読んでいくうちにあることに気づきました。シンプルでいいんだ。求められたことを考えすぎなくていいんだと心が解けたような気がしました。一番心に響いたのは最後のページに書かれた「あなたがあなたであること」という言葉が心に刺さりました。「あなたは何なの?」と問われた気がしました。自分は何がしたいのか、自分は何なのかということです。
人生の転機
その後は学校を退職してフリーランスで仕事を始めました。生徒たちとの交流もできて充実した生活を送っています。答えを探し求めてふらふらするのではなく、軸を持って自由にいろんな場所でいろんな方と出会って、自分らしく生きることに繋がっていると感じています。
シンプルな言葉が自分の心の中に染みる
多様性の時代なので今の時代にフィットしますよね。大人になるとハッと入ってくる瞬間があります。磯崎さんもご両親を亡くした時に、これからどう生きていこうか考えた時に、「じゃああなたにとって大切なものは?」とシンプルな言葉が自分の心の中に染みてきました。こういったところが大人が絵本を楽しむ大事なところではないでしょうか。
文字を実際に書かれたのは元木雅弘さん
最後の「あなたがあなたであること」という文字を実際に書かれたのはご主人の元木雅弘さんだったようです。
いろんな方のマイベスト絵本
「100万回生きた猫」の魅力
いろんな方のマイベスト絵本を紹介してもらいます。浜島直子さんがおすすめするのは「100万回生きた猫」です。佐野洋子さんの絵本です。死んでは生まれる輪廻転生を繰り返す猫。何度も生まれて様々な経験をしました。サーカスで活躍したりして多くの経験があることを誇りにしてきました。ある時、最愛の白い猫に出会って何回も生まれ変わることよりもかけがえのないものがあることを知ります。愛の絵本だと感じています。子供の頃からなじみ深い本ですが、大人になって改めて見てみると自分のやりたいことを自分の責任で楽しめる方がかけがえのないのではないかと感じました。18歳で上京した時に自分の部屋に飾っておきました。22歳で少し年上の方と出会って結婚することになって母親から心配されましたが、大丈夫だと説得するためにこの絵本をまた送りました。人生のターニングポイント、どうするかは自分で決めるんだと励ましてくれた本です。もう40年以上も愛されている名作です。
「一わだけ はんたいにあるいたら」の魅力
中越さんがおすすめなのが「一羽だけ 反対に歩いたら」という本です。裏と表で切れている本です。飛べない鳥たちが、鳥の1羽だけが他の鳥と反対方向に歩き始めて、「みんなと同じように進め」と罵られてヒートアップしました。その場所がヒートアップしてしまいましたが、ある鳥が自分たちには翼があったと気づいて飛び始めました。シンプルでかなりダイナミックで素敵です。子供の頃から反骨精神が強かったので、そんな自分を見透かしてくれているように感じました。みんなの言う当たり前がいいことではないと嫌われても、あなたのやりたいことをチャレンジしてみれば、新たな世界が見えてくるよと励まされるようでした。自由がいいなと思いました。今は絶版となっていますが、図書館などで借りることができます。
グルンパのようちえんの魅力
「グルンパの幼稚園」は子供の頃は可愛い絵だなと思っていました。主人公は一人ぼっちのゾウです。靴屋さんなどいろんなお店で働いていましたが、作るものが全部大きくなってしまいます。しかし、その大きなものを生かして幼稚園を作ったら、たくさんの子供たちが喜んでくれました。自分が今までやってきたことは無駄にならないし、自分ができることを探せば、自分も幸せになるし人も幸せにできると思うことができました。
「もこもこもこ」の魅力
磯崎さんのマイベスト絵本は「もこもこモコ」という谷川俊太郎さんの絵本です。子供がどうしても泣き止まない時に、このフレーズを声に出して読むとピタッと泣き止んでくれたという経験をしました。もちろんいろんな絵本を読まれていますが、絵本が本当に役に立つんだと実感させてくれました。
シンプルな言葉の力
シンプルですね。「もこもこ」「にょき」「ギラギラ」などと擬態語や擬音語があります。こういう言葉もまた意味を考えさせられますよね。抽象的なのでどんなものなのか、その時々で変わってくるようです。
まとめ:大人に響く絵本の魅力
大人の頃に響く絵本がこれからもずっと人気が続きそうですね。大人が絵本に求める感情も一様ではありません。それに対して新しい表現の絵本も新たに生まれています。自分にぴったりな絵本、あなたにぴったりの絵本を探して欲しいということです。今見てもピンと来ないかもしれませんが、何年か後に見たらグサッと刺さるということもありそうですね。
はじめてのおつかい
「初めてのおつかい」という絵本は、子育てで忙しいお母さんに頼まれてお使いに行く女の子のお話です。今でも「牛乳ください」と言うと、みんなで合唱するそうです。
病院の待合室に絵本が置いてあって好きになったという絵本です。これで辛い診察も耐えられるようになりました。
「あいうえおべんとう」のおかげで一人でご飯を食べてたお子さんが周囲に声掛けできるようになった
「あいうえお弁当」は、あおこさんが幼稚園で一人でご飯を食べていましたが、これを勧められました。読み聞かせをしたら、絵本の最後のシーンのみんなが輪になってお弁当を食べているシーンを見て、周りの子に一緒に食べようと声をかけられるようになったそうです。
だいじょうぶ だいじょうぶ
「大丈夫大丈夫」という本。育児をしていて良い子にするために厳しい子育てをしてしまいました。子供が高校に行けなくなった時にこの本を読んで、「何があっても大丈夫大丈夫」と言ってあげられる余裕がなかった自分を反省しました。大人になっても様々な気づきがあります。
こんとあき
視聴者の方がお好きな絵本は「こんとあき」です。子供が小さい時に寝る前の読み聞かせで大活躍してくれました。最後のページに髪形があって、小さくなって着れなくなった子供たちの服を作って、我が家のこんを作ったということです。お子さんもすごく気に入ってくれたようです。
もうぬげない
20代の社会人の方が好きなのは、「もう脱げない」というヨシタケシンスケさんの絵本です。お風呂に入る時に、自分でどうしようもなくなってしまう姿に癒されました。仕事でうまくいかない時も癒されます。
へいわとせんそうの情景
谷川俊太郎さんが文を書いて、ノリタケさんが絵を書いている「平和と戦争」という絵本。大人が読んでも良いということです。戦争の時の情景と平和の情景が見開きで対比されていて、ずっと心に残ります。
きんぎょがにげた の思い出
「金魚が逃げた」という絵本は、看護師の仕事をしながら子育てをしていた頃に、絵文字が読めない2歳の時でも、子供が保育園で先生が読んでくれたのを丸暗記して、一人で読んでくれていました。
絵本の処分を考えて
子供たちが小学校を卒業してもう絵本も処分しようかと思っていたら、また後で見返せるように残しておこうという気持ちになったそうです。2月、3月、そういう時期ですが、また読み返してみるのもいいかもしれませんね。
ノンタンシリーズの魅力
他の方がおすすめしているのはノンタンシリーズです。絵がほんまかと可愛くて文字も少ないです。自分たちで勝手にリズムをつけて読んでいたそうです。本の大事さも教えてもらいました。